RULAcalc_readme

RULAcalc: 迅速上肢評価計算ソフト

【1】概要

 本ソフトRULAcalcは、McAtamneyらが開発したRULA (Rapid Upper Limb Assessment)[1]による評価を支援するためのソフトである。OWASが全身での重量物取り扱い作業を対象としていたのに対し、RULAは主に上肢を使う手作業を対象とし、その際の身体負担軽減や筋骨格系障害予防のためのアセスメントに利用される。適用範囲は、定常的な作業が多い生産ラインの組み立て作業の評価から、非定型作業が多い医療・保健分野での作業評価まで広い。
 本ソフトには以下の機能が含まれる。
1)RULAの各身体部位のスコアを入力すると、総合スコアやアクションレベルまでの計算を自動で行って結果を表示することができる。これより、上肢に負担のかかる作業の評価と改善に利用することができる。
2)簡易的にスコア表から身体部位のスコアを逆に表示する機能により、改善策の探索を支援する機能を持つ。

 本ソフトは、無登録では「デモ版」として保存機能をブロックしています。「正式版」の利用を希望される方は作者まで連絡ください。

【2】データファイルの扱い

・画面で入力した各関節のスコアなどは、画面左端中段の[レコード]の[保存]や[上書]でファイルに保存される。また[削除]で削除できる。
・データの保存先のファイルは、メイン画面の左の「ファイル」の[新規]・[保存]で指定できる。[開く]を使うと、既存ファイルの読み込みができる。
・起動直後にファイルを指定しないと、ドキュメントフォルダの\Ergo4MFG\RULAcalcフォルダ内のRULAdata.rlaというファイルにデータは仮保存される。のちに[ファイル]の「保存」から保存すべきファイル名を指定すると、そのファイルにデータは保存される。
・データは、1レコードが1画面のデータになるようにCSV形式で保存されているテキストファイルなので、そのままエクセル等で利用することが可能である。

【3】入力項目

 RULAは、OWASのように各時点の姿勢を繰り返し記録し集計して評価する方法ではなく、調査者が作業を観察し、頻度が高い作業場面あるいは負荷が高いと思われる作業場面のみを抽出して素早く評価する手法である。
 本法には、左右の上肢を分けて評価したり左右を合わせて総合評価したりする仕組みはない。これは迅速な評価を優先するためで、基本的には評価の優先度が高いと考えられる側の上肢を決めて評価することになっている。
 入力項目は多数あるが、本ソフトでは1ページ目のタブに全ての入力項目と結果を表示して評価の全体像が把握できるようにしてある。2ページ目以降のタブに、入力項目や結果を部分にわけて大きな文字で表示している。必要に応じてタブを変えて入力する。
 身体各部位のスコアは、スコアに応じた図の部分をマウスでクリックすると入力できる。
 入力した値は、[レコード]の[保存]や[上書]でファイルに保存される。[保存]は追加保存、[上書]は既存レコードの修正上書き保存である。
 1つのファイルに保存できる最大のレコード数は1000件である。

1.上腕・前腕・手首・手首ひねり
1)上腕:上肢の屈曲・伸展角に応じた肢位を選ぶ。また、肩の挙上、外転、支えがあれば追加スコアとしてチェックを入れる。肩の挙上は、腕を高くあげてする作業、肘を上にあげてする作業、作業面の高さが肘の高さより微妙に高い場合の作業などでみられる。外転は10~20度以上の外転があればチェックを入れる。
2)前腕:前腕が水平な状態を基準とし、それより曲げるか伸ばすとスコアを+1する。また、手が正中線より反対側に出るあるいは手が肩より外にでるときも、それぞれスコアを+1する。
3)手首:おおむね掌屈も背屈もなければ1、そうでなければ2または3にする。手首が橈屈あるいは尺屈した場合も+1する。
4)手首のひねり(前腕の回内・回外)は、最大可動域付近であれば2、そうでないときは1とする。
5)スコアA:上記の4部位を指定するとその総合スコアであるスコアAが確定する。スコアAの表の中をマウスでクリック・ドラッグすると、そのスコアに応じた身体部位のスコアが仮に提案される。

2.頸・体幹・下肢
1)頸:前屈あるいは後屈に応じてスコアをつける。頸のひねりや側屈があれば、それぞれ+1とする。いずれも10~20度程度のひねりや側屈があれば、ありと判定するとよい。頸の後屈は、上を見上げる姿勢や、前屈姿勢で顔を上げて前方を見る姿勢をとると生じやすい。
2)体幹:前傾角に応じてスコアをつける。これもひねりや側屈が10度または20度を超えるとありと判定するとよい。
3)下肢:両足立ちの時や座位では1、そうでないときは2にする。
4)スコアB:以上の3部位のスコアを指定すると、その総合スコアであるスコアBが確定する。表の中をマウスでクリック・ドラッグすると、そのスコアに応じた身体部位のスコアが仮に提案される。

3.筋使用と力・負荷スコア
 いずれも、スコアA用とスコアB用に入力する。
1)筋使用スコア:保持姿勢があるか反復動作があれば1にする。なければ0。
2)力/負荷スコア:ほぼ力の発揮がないか2kg未満の物の取り扱いまでなら0、2~10kgのものの取り扱いがあれば1か2、10kg以上の物の取り扱いや手で叩きつける動作がある場面などは2とする。
3)以上の項目の入力が終わると、スコアCとDが計算される。

【4】評価と判定

 以上の項目の入力がすべて終わると、スコアCとDから総合スコアが計算され、それに基づいてアクションレベルALの判定が行われる。アクションレベルに応じた対応は、表示のメッセージの通りである。ALが3や4の場合は改善を進める必要がある。

【5】注意

1.本ソフトは、原文の図表の転載許可をElsevier社から得て作成した。
Reprinted from Applied Ergonomics, Vol.24, No.2, Lynn McAtamney, Nigel E. Corlett, “RULA: a survey method for the investigation of work-related upper limb disorders”, pp.91-99, 1993, with permission from Elsevier.
2.本ソフトはフリーソフトとして公開しているが、利用目的と配布数に若干の制限があるため、無登録では「デモ版」として保存機能を制限している。正式版の利用を希望する方は問い合わせページよりその旨ご連絡ください。デモ版の解除コードをお伝えします。無断での複製や転載は不可です。
3.本ソフトは、使用者自身の責任において使用すること。作者は、本プログラムを使用したことによって生じたいかなる損害に対しても、それを補償する義務を負わない。
4.本ソフトは、現在も改良を進めている。予告なく仕様が変わる場合があることをご了承ください。

【6】作者および問い合わせ先

 ものづくりのための人間工学, 人間工学評価ツール開発メンバー
  URL https://ergo4mfg.com
  上記URLの問い合わせページよりお願いします。

【7】文献

[1] Lynn McAtamney, Nigel E. Corlett, RULA: a survey method for the investigation of work-related upper limb disorders, Applied Ergonomics, Vol.24, No.2, pp.91-99, 1993