RULA_doc

RULA(迅速上肢評価法)の概要

【1】概要

 RULA (Rapid Upper Limb Assessment)は、McAtamneyらが開発した上肢作業による筋骨格系障害予防のための負担評価法である[1]。RULAは、生産ラインでの組み立て作業といった定常作業から、機器のメンテナンスなどの非定常作業まで広く利用される。

【2】評価対象とする作業場面の選出

 RULAは、頻度が高い作業場面や負荷が高いと思われる作業場面のみを抽出して評価する。評価すべき作業シーンをうまく選定することが、適切な評価の第1歩になる。評価すべき作業シーンの例は以下のとおりである:

  • 業務量が多いあるいは頻度が高い作業場面
  • 職場巡視で気になった作業場面
  • 作業者や管理者から訴えのあった作業場面
  • 健康障害が発生した作業場面

 複数の作業シーンをまとめて1つの作業シーンとして評価してはいけない。たとえば、腕を上にあげた作業シーンと手首のまがった作業シーンが別々にあるのを、1つの作業シーンとして解析してはならない。
 また、本法は左右のいずれかの上肢を中心に評価する方法である。左右それぞれ評価する必要がある場合は、別々に評価する。なお本法には、別々に評価された左右の上肢を合わせて総合評価する仕組みはない。

【3】入力項目と評価の手順

 本法は、ソフトRULAcalcで示すように、上肢、体幹等、筋の使用や作業頻度などを部位別・項目別に記録する。その後、記録内容に応じて、それぞれ表を使って要約し、最終的に総合スコアGSからリスク判定を行うアクションレベルAL を求める。各項目の入力方法とその取りまとめの方法は以下のとおりである。

1.上肢のスコアの記録

 上腕・前腕・手首・手首ひねりの4つのスコアを記録する。

1)上腕

 まず、上腕の屈曲(正確には肩関節の屈曲)に応じたスコアを決める。肩関節の屈曲角は、下図に示す通り、体幹に対する上腕の屈曲角(体幹の長軸方向と上腕の肩関節から肘関節を結ぶ線がなす角)である。直立姿勢で腕を下に垂らした状態が0度で、上腕を前にあげると屈曲、後ろにあげると伸展である。屈曲角に応じたスコアは以下のとおりである。

  • 20度伸展~20度屈曲の間:1
  • 20度を超える伸展、または20~45度の屈曲:2
  • 45~90度の屈曲:3
  • 90度以上の屈曲:4

 上記のスコアを補正する追加スコアには以下のものがある。 

  • 肩の挙上があれば+1する。肩の挙上は下図中央のような状態で、肘や腕を上にあげて行う作業や、作業面の高さが肘の高さより微妙に高い場合の作業台での作業などでみられる。肩の凝りやすい作業姿勢である。
  • 上腕の外転があれば+1する。これも作業台が高い場合や、取り扱い物や工具の取り回しで手元の空間を広くとりたい場合によく生じる。10度程度の小さな外転はいつも発生しているので、それ以上の外転が生じている場合に+1する(ありとする角度は、研究者により10~45度まで様々・・)。
  • 上腕に支えがあれば-1する。腕を机に置いて作業している場合などがこれに該当する。

 上記の上腕の屈曲角に応じたスコアに追加スコアを加え、上腕のスコアを求める。たとえば、屈曲角が30度で上腕の屈曲スコアが2、肩挙上ありで+1、外転ありで+1、支えなしとすると、2+1+1=4が上腕のスコアになる。

(補足) 上腕の屈曲角に応じたスコアが1のときに支えありで-1とすると、上腕のスコアは0になる。しかし、後述する上肢のスコアを求める表Aには上腕が0の値がなく、その場合の対応についても原文には記載はない。RULAcalcでは、その場合は最も低いスコアである1として処理している。 

2)前腕

 まず、前腕の屈曲(肘関節の屈曲)に応じたスコアを以下のように求める。肘関節の屈曲角は、上腕の長軸方向と前腕の長軸方向がなす角度で、肘を曲げずにまっすぐ伸ばした状態が0度である:

  • 60~100度の屈曲:1
  • 60度未満の屈曲あるいは100度を超える屈曲:2

 本法では、肘をまっすく伸ばした状態ではなく60~100度曲げた状態がスコアが1で最少となっている。これは作業を想定すると、肘の高さあたりの作業台で肘をある程度曲げた姿勢で作業するのが作業に適しているためである。

追加スコアとしては、作業者を上から見て、体の反対側や体の外側に手を伸ばして作業している場合に+1する。

 前腕の屈曲に応じたスコアに追加スコアを加え、前腕のスコアを決める。

3)手首

 まず、手首の曲げ(手関節の掌屈・背屈)に応じたスコアを決める。手首の掌屈・背屈の角度は、前腕に対する手根部の手のひら側あるいは手の甲の側への屈曲角である。ただし本法では、手首と手の握り中心とを結ぶ線と前腕の長軸とがなす角度となっている(原文の図では、手根が10~15度背屈した状態が中間位である0度になっている)。スコアは以下のとおりである

  • 掌屈も背屈もない:1
  • 15度未満の掌屈あるいは背屈:2
  • 15度以上の掌屈あるいは背屈:3

 追加スコアとしては、橈屈・尺屈があれば+1とする。橈屈は母指側への手首の屈曲、尺屈は小指側への手首の屈曲である(これも10~20度のはっきりした屈曲がある場合にありと判定することになる)。

 手首の曲げに応じたスコアに追加スコアを加えて、手首のスコアを求める。

4)手首ひねり

 手首のひねりとは前腕の回内・回外のことである。下図に示すように、肘を90度まげた姿勢で前腕を回旋させる動作が、回内・回外である。手首の関節には2つの自由度(掌屈・背屈と橈屈・尺屈)しかなく、手首のひねりにみえる動作は実際には前腕の回内・回外動作で生じている。肘がほぼ伸びた状態で手を回内・回外すると、前腕だけでなく上腕も長軸方向に回旋するが、ここで対象としているのは前腕部の回内・回外動作である。スコアは以下のようにする:

  • 中間位付近の回内・回外:1
  • 最大あるいはその付近まで回内あるいは回外:2

 前腕の回内・回外の最大可動域は90度で、下図の上腕下垂・肘関節90度屈曲の姿勢だと、手の平を真下に向けた状態が90度回内、手の平を真上に向けた状態が90度回外の状態になる。キーボードを打つときは90度近く回内しているが、通常、上腕が少し外転することで回内の不足分を補う姿勢になる。
 最大まで回内あるいは回外することが多いのは、ねじを締める場面、ふたを閉める場面、部品をねじってはめ込む場面などである。

2.体幹等のスコアの記録

 頸、体幹、下肢の3カ所についてスコアをつける。

1)頸

 頸の屈曲・伸展(前屈・後屈)に応じて、以下のようにスコアをつける。頸の屈曲角は、下図の通り、体幹に対する角度で、直立で自然に前を向いた状態を0度とする:

  • 0~10度の前屈:1
  • 10~20度の前屈:2
  • 20度以上の前屈:3
  • 後屈あれば4

 下図のように体幹がやや前屈している場合、鉛直方向に対する頸の角度ではなく、体幹に対する頸の角度を記録するように注意すること。
 頸の後屈は、上向き作業で生じるほか、作業位置が低いときに前屈姿勢で前を目視する作業の場面でよく発生する。

 追加スコアとしては、頸のひねりや側屈があれば、それぞれ+1とする。いずれも10~20度程度のひねりや側屈があれば、ありと判定するとよい。頸のひねりや側屈も、斜め上を見上げる作業姿勢や、両目でよく注視して作業する必要がある場面でよく発生する。

 頸の屈曲に応じたスコアに追加スコアを加え、頸のスコアを求める。

2)体幹

 体幹の前屈角に応じたスコアをつける。体幹の前屈角は、鉛直方向に対する体幹の長軸方向のなす角度である。体幹が湾曲している場合は、左右の肩(肩峰)の中点と左右の股関節(大転子)の中点を結ぶ線と鉛直方向とのなす角を用いることが多い。スコアは以下のとおりである:

  • 前屈がない、あるいは座位でも背もたれや机で体幹が支えられている場合:1
  • 20度以下の前屈:2
  • 20~60度の前屈:3
  • 60度以上の前屈:4

 追加スコアとしては、体幹のひねり(回旋)あるいは側屈があれば、それぞれ+1とする。これもひねりや側屈が10度または20度を超えるとありと判定するとよい。一般に人がひねり姿勢をとる場合、立位に近い状態だと、体幹部よりも下肢のほうが大きくひねったり側屈したりする。体幹の回旋や側屈の最大可動域は45度程度なので、それ以上に体をひねっているように見える場面では、たいてい足のひねりや組み換えが起こっている。

 体幹の前屈によるスコアに追加スコアを加えて、体幹スコアを求める。 

3)下肢

 下肢のスコアは以下のようにつける:

  • 下肢あるいは足で体がよく支えられてバランスが取れている場合:1
  • そうでない場合:2

 通常の両足立ちや座位の状態は1である。片足に体重がかかるような場合は2である。その他、足まわりに物があって自由に立ち位置が決められない場合、狭い場所などで不自然な姿勢で作業する場合、押し引きを伴う作業、作業位置が低すぎるあるいは高すぎる作業の場合などで、2に相当する場面がよくみられる。

3.筋使用と力・負荷スコア

 いずれも、上肢と体幹等のために、それぞれスコアを決める。

1)筋使用スコア

 以下のいずれかがある場合に1,いずれもない場合は0とする。

  • 保持姿勢:1分間より長い時間、同じ姿勢を保持する作業である場合
  • 反復作業:毎分4回より高い頻度で作業を繰り返す場合

 保持姿勢の例としては、上肢を上にあげたままで部品の取り付けや検査をする場合、前屈姿勢や中腰姿勢のままで低い位置での作業を行う場合などが相当する。前者は上肢、後者は体幹等の筋使用スコアを1にすることになる。
 組み立て作業や検査作業などでは、上肢は反復作業、体幹等は同じ位置で上肢の作業を支えるために保持姿勢になることもある。

2)力・荷重スコア

 以下のようにスコアをつける:

  • 力発揮がほぼないか2kg未満の取り扱い物を断続的に扱う場合:0
  • 2~10 kgの取り扱い物や力発揮を断続的に行う場合:1
  • 2~10 kgの静的な荷重(荷物保持など)がかかる場合、あるいは2~10 kgの反復的な荷重がかかる場合:2
  • 10 kg以上の静的な荷重がかかる場合、あるいは10 kg以上の反復荷重がかかる場合、あるいは衝撃力がかかる場合:3

(補足1)どこまでを「断続的」・「静的」・「反復」とするかについて、原文には特に明記されてない。一般的にも明確な数値基準はないが、「断続的」は定期的ではなく不定期に行われる状況を指すことが多い。また、1の筋使用スコアの設定(保持は1分間超、反復は4回/分超)は一つの参考になる。
(補足2)力・荷重スコアは、本来は上肢と体幹等の両方にその影響は及ぶので、両方に同じスコアをつけるのがよいようにも見える。ただしそうすると、保持や荷重の影響が大きく影響し、最終的な判定が常にリスクあり(AL=2)に判定されてしまう。ちなみにREBAでは、荷重については体幹等のみスコアを与え、保持については上肢と体幹等を統合した後にこのスコアに加えるようになっている。したがってREBAとの一貫性にも配慮するなら、作業内容を踏まえて上肢のみあるいは体幹等のみにスコアをつけるのがよいだろう。

4.部位別スコアの集計と判定

 以上で、収集すべきデータが集まったので、その集計を行う。
 上肢の4部位のスコアは、表よりスコアAにまとめる。下図左はスコアAの表の例で、上肢スコアが3、前腕スコアが2、手首スコアが3、手首ひねりスコアが2なので、スコアAが4となる。
 体幹等の3部位のスコアは、表よりスコアBにまとめる。下図右はスコアBの表の例で、頸スコアが3、体幹スコアが4、下肢スコアが2なので、スコアBが6となる。 

(注)上表のスコアAとBおよび後述の総合スコアGSの表は、いずれもソフトRULAcalc2の画面表示例である。スコアAやBの表中のスコアの数字の色分けは原文にはなく、これはRULAcalc2で独自につけたものである。これは黄色のスコアになるとそれ単独でALが2(つまり中程度のリスクあり)、赤色のスコアになるとそれ単独でALが3以上(つまり高リスク)となることを示している。つまり、上肢等あるいは体幹等の姿勢単独でリスクがあるかどうかをチェックできるように示したものである。

 スコアAに上肢用の筋使用スコアと力・荷重スコアを加えるとスコアCが求められる。
 スコアBに体幹等の筋使用スコアと力・荷重スコアを加えるとスコアDが求められる。

 スコアCスコアDを表にあてはめると、総合スコアGSが決まる。下図はRULAcalc2の総合スコアGSの表の例である。スコアCが7、スコアDが6で、総合スコアGSが7となっている。

 総合スコアGSより、アクションレベルALが下表のとおり決まる。

アクションレベル AL総合スコアGS判定
11または2長時間持続しなければ、この姿勢は受容可能
23または4さらなる調査が必要で、改善がおそらく必要
35または6調査して改善が必要
47調査と改善が直ちに必要

【4】改善への利用手順

 以下に評価後の改善への進め方の概要を示す。

1)ALに基づいてその作業シーンを判定する。ALが3または4の場合は改善を進める。
2)姿勢については、スコアの高いところを優先的に改善する。たとえば上肢のスコアAと体幹等のスコアBを比較してAのほうが高ければ、上肢のスコアの高い部分を優先的に改善する。
3)筋使用や力・荷重については、総合スコアへの影響が大きい。通常、この部分の改善は難しい場合が多いが、それでも姿勢スコアよりも先にどこか改善できないか検討する。
4)姿勢の改善については、単に作業姿勢に注意するように指示するのは管理的改善で効果が低い。できるだけ工学的な改善を行う。たとえば、上肢を挙上した姿勢や体幹を前傾した姿勢にならないよう、作業位置や作業方法を改善したり、工具等の利用ができないか検討する。
5)改善案は、数値的に決めて改善後の作業条件での総合スコアGSやアクションレベルALを求め、改善の効果推定に利用する。

【5】解析例

 解析例を以下に示す。解析画面の上段はRULAcalc、下段はRULAcalc2による。両者は入力法が違うだけで、各部位のスコアや判定はすべて同じである。

例 (1):RULAの基本姿勢である肘高での立位姿勢の評価例である。取り扱い物の質量は3 kgとしている。ALは1で、低リスクである。

例 (2):レンチでのボルト締め作業の例である。肩高近い高さで上腕を外転させた姿勢で作業をしている。レンチを握って押し引きする際に手首の尺屈が生じる。作業は毎分4回以上で、操作力は3-5 kgの発揮があるとしている。ALは3で高いリスクありと判定される。

例 (3):手回しドライバーでのねじ締作業の例である。作業位置が左側にあるため、右手を反対側に伸ばしての作業になっている。ねじ締時に手首ひねりがある。やや左を向いての作業なので頸のひねりもありとしている。例 (2)同様、作業は毎分4回以上、力発揮は6 Nm程度(ドライバの握りが直径3 cmとして、把持力はおそらく10 kg前後)としている。ALは3で高いリスクありと判定される。

例 (4):電動ドライバでの高い位置でのねじ締作業の例である。上腕を上にあげての作業で、手首はドライバの握りをもってビットが垂直な壁面に直交するように当てるためにやや尺屈している。作業点を注視するので頸もやや後屈している。ドライバは2 kgとする。この場合はALは4で高リスク、至急改善が必要と判定される。

文献

[1] Lynn McAtamney, Nigel E. Corlett, RULA: a survey method for the investigation of work-related upper limb disorders, Applied Ergonomics, Vol.24, No.2, pp.91-99, 1993

(その他のメモ)

1)手首や体幹の0度(屈曲や前屈なし)はどう判定するか
 本法は、何も問題のない中立姿勢に近い姿勢の判定には不向きなところがある。たとえば手首や体幹の0度はマージンがない。頸も、前屈0度だとスコア1だが、後屈になったとたんにスコア4となるので、ALへの影響が大きい。
 これは、本法が目視による評価法で、かつ基本的に問題のある作業シーンを中心に評価するように作られたためであろう。観察や聞き取りで特に問題なしと判定された部位については、角度の正確な値よりも0度とみなせるという結果が記録できればよいようである。他の評価法でも似た状況がみられる。追加スコアに多い、有無の判定も同様である。
 本法をモーションキャプチャデータのように連続的に測定したデータに適用すると、マージンがない部分で判定がバタついて悩まされる。そのため、5~15度くらいのマージンを設定したと記載している論文がよくある。このような連続的な記録・分析に本法を使うのは本来は適用外なので、その扱いは各自の判断になる。
 ちなみにRULAcalc2やREBAcalc2では、画像をデジタイズして体幹の角度を調整できるが、現状では0度の区分にマージンを全くとっていないので、デジタイズではちょうど0度の角度区分になることがほぼない。

2)「上肢評価」と言いながら、体幹や下肢の姿勢まで記録する理由は?
 上肢作業は手の届く範囲(リーチ)が狭い。そのため、リーチが足りない場合は、作業場所まで体を動かして作業する。その際、立ち位置を変更できる場合は移動すればよいが、そうでない場合は、体幹の前傾やひねりでリーチを稼ぐことがある。逆に足場や全身姿勢がうまく取れない場合、結果的に上肢の作業姿勢が不適切になる場合がある[1]。これらをチェックするには、体幹や下肢の状況も含めてある程度までは記録する必要がある。本法の構成は、それを踏まえたものである。

3)RULAとREBAで微妙に角度の「≧(以上)」と「>(超)」が違うところがある。
 原文で比較すると、以下の3カ所で違いがある。原文を読む限り、特に何らかの意図をもって変えたのではなさそう。目視で姿勢を区分する場合だと、目視での読み取り角自体に5度から10度の誤差があるので、角度の区分値のところをどちらに含めたとしてもほとんど問題にならないためなのでしょう。

  • 上腕の屈曲の区分で、RULAは90度以上がスコア4、REBAは90度超がスコア4
  • 手首の屈曲の区分で、RULAは15度以上の掌屈・背屈がスコア3、REBAはRULAは15度超の掌屈・背屈がスコア3
  • 体幹の屈曲の区分で、RULAは60度以上がスコア4、REBAは60度超がスコア4