MHL_readme

MHL: Liberty Mutual の式による荷物取り扱い許容限界計算ソフト

【1】概要

 本ソフトMHLは、Liberty MutualのPotvinらによる手作業による荷物取り扱い式(LM-MMH: liberty Mutual manual materials handling equation)[1]に基づいて、荷物持ち上げ・運搬・押し引きの各作業の設計や評価を支援するためのものである。LM-MMHは、従来、SnookとCirielloが作成して広く世界で利用されていたSnook & Ciriello Tables [2][3]に新たな実験データを加えて回帰式の形で再整理されたものである。

 本家のWebで利用できるLM-MMHは以下のリンクで公開されている。
 https://libertymmhtables.libertymutual.com/

【2】使用法

・荷物の持ち上げ・持ち下げ、荷物の運搬、台車等の押し・引きの3種類の作業について、それぞれの作業条件での最大許容荷重(MAL: Maximum Acceptable Load)が求められる。作業はいずれも両手での作業に限定されている。
・事前に性別と受容率を指定する(ただし、男女で作業条件の指定可能範囲に差があるので、必ずしも同一条件での男女比較ができるわけではない)。
・各条件の値のスピンボタンを上下すると、直ちにその条件のMALが求められる。指定可能な条件の範囲も逐次更新される。
・各条件に対し、参照質量RLとスケールファクターSFが表示される。参照質量RLは、理想的な作業条件での最大取り扱い質量に相当する値である。SFはその補正項で、最良の条件で1となり、条件が悪くなると1より小さくなっていく。MALは、理想状態である参照質量RLに各SFを掛け合わせて求めた作業条件における取り扱い質量上限値といえる。従って、SFの小さいものから改善することで効果的にMALを高くするように改善できる。
・画面左下には横軸を反復頻度F[回/分]、縦軸をMAL[kg]にしたグラフが表示される。グラフ内をクリック・ドラッグすると、その位置の反復頻度のMALの値が直ちに再計算・表示される。頻度の最大は持ち上げ・持ち下げでは20[回/分]、運搬・押し引きでは10[回/分]であるが、指定された持ち上げ高さや移動距離で所定の平均速度を越えない範囲に限定して求めている(途中で計算が打ち切りになることがあるのはそのためである)。
・画面下右のテキストボックスには、計算条件と計算結果が出力されている。下左のグラフのデータも出力されている(反復頻度Fは0.1[回/分]以下は0.1[回/分]刻み、それ以上は0.5[回/分]刻みで求められている。Fの最小値は常に1/480[回/分]である。
・結果の保存機能はないので、画面下右のテキストボックスの値をコピーして利用すること。

【3】荷物の持ち上げ・下げ(降ろし)

1.始点の水平距離H[m]:左右の足首の中点から両手の握りの中点までの水平距離を入力する。男性は0.25~0.73[m]、女性は0.20~0.68[m]の範囲で指定する。最小値は体との干渉、最大値は手の水平リーチによる範囲である。手の水平距離が左右で異なるときは、平均距離を使う。持ち上げの始点と終点で距離が異なるときは平均値か最大値を使う。
2.始点の高さV[m]:持ち上げの時は、床面(0[m])から手を上に伸ばした時の最大リーチ-0.25[m]の範囲で指定する。0.25[m]は持ち上げ高さDVの最小幅である。持ち下げ(降ろし)の時は、手を上に伸ばした時のリーチから床上0.25[m]の範囲で指定する。LM-MMHでは、手を上に伸ばした最も高い位置は男性では2.14[m]、女性では1.96[m]とされている(いずれも男女の50パーセンタイル値による)。
3.上げ下げ高さDV[m]:荷物を持ち上げるあるいは下す幅を指定する(いずれも正の値で指定)。持ち上げの場合、最小は0.25[m]、最大は手を上に伸ばした時の最大リーチである。持ち下げの場合は、最小値は0.25[m]、最大値は始点の高さVである。本手法では、持ち上げのない保持姿勢(つまりDV=0[m])の評価はできない。
4.反復頻度F[回/分]:1分間あたりの持ち上げの繰り返し回数で指定する。最小値は1/480[回/分]、最大値は20[回/分]である。最小値は1日の8時間の労働時間内で1回(8時間×60分=480分)の意味である。最大値は20[回/分]であるが、平均移動速度(=DV×F)が11[m/分]を越えない範囲に限定される。
4.本家のWebでは、荷物の持ちやすさの補正係数(Coupling scale factor)として、取手のない場合は0.84、不良なハンドルしかない場合や滑りやすい場合は0.925をそれぞれMALにかける方法が紹介されている。
5.各変数のスケールファクターは、水平距離HがHSF、高さは始点と終点の平均高さに対するVRMSF、上げ下げ高さDVがDVSF、反復頻度FがFSF、ハンドルCがCSFである。

【4】荷物の運搬

1.手の高さV[m]:運搬中の手の握りの床からの高さ(左右の中点)を指定する。値の範囲は、男性では0.78-1.10[m]、女性では0.78-1.03[m]に限定されている。
2.運搬距離DH[m]:運搬の始点から終点への手位置(左右の中点)の水平距離を指定する。距離は2.1-10[m]の範囲に制限されている。
3.反復頻度F[回/分]:1分間あたりの運搬の繰り返し回数で指定する。最小値は1/480[回/分]、最大値は10[回/分]である。最小値は1日の8時間の労働時間内で1回(8時間×60分=480分)の意味である。最大値は10[回/分]であるが、平均移動速度(=DH×F)が29[m/分]を越えない範囲に限定される。
4.各変数のスケールファクターは、手の高さVがVSF、移動距離DHがDHSF、反復頻度FがFSFである。

【5】台車等の押し引き

1.ハンドルの高さV[m]:台車のハンドルの握りの床からの高さ(左右の中点)を指定する。値の範囲は、男性では0.63-1.44[m]、女性では0.58-1.33[m]に限定されている。
2.運搬距離DH[m]:運搬の始点から終点への手位置(左右の中点)の水平距離を指定する。距離は2.1-61[m]の範囲に制限されている。
3.反復頻度F[回/分]:1分間あたりの運搬の繰り返し回数で指定する。最小値は1/480[回/分]、最大値は10[回/分]である。最小値は1日の8時間の労働時間内で1回(8時間×60分=480分)の意味である。最大値は10[回/分]であるが、平均移動速度(=DH×F)が37[m/分]を越えない範囲に限定される。
4.各変数のスケールファクターは、ハンドル高さVがVSF、移動距離DHがDHSF、反復頻度FがFSFである。

【6】注意

1.本ソフトは、文献[1]の式をそのまま使用している。条件の範囲も文献[1]の値をそのまま利用している。日本人向けの値の補正は行っていない。
2.重量物の取り扱いに関しては、国内は「職場における腰痛予防対策指針」で男性の手作業での荷重は体重の40%まで(女性は男性の60%まで)、ISOでは11228-1などで25kg前後までとすることが示されている。本ソフトで計算すると特に男性でそれをはるかに超える値が示される場合があるが、実務においては国内指針やISOの限界値を採用すべきである。
3.本ソフトはフリーソフトとして公開しているが、無断での複製や転載は不可である。
4.本ソフトは、使用者自身の責任において使用すること。作者は、本プログラムを使用したことによって生じたいかなる損害に対しても、それを補償する義務を負わない。
5.本ソフトは、現在も改良を進めている。予告なく仕様が変わる場合があることをご了承ください。

【7】作者および問い合わせ先

 ものづくりのための人間工学, 人間工学評価ツール開発メンバー
  URL https://ergo4mfg.com
  上記URLの問い合わせページよりお願いします。

【8】文献

[1] Jim R. Potvin, Vincent M. Ciriello, Stover H. Snook, Wayne S. Maynard and George E. Brogmus, “The Liberty Mutual manual materials handling (LM-MMH) equations”, Ergonomics, 64, 8, pp.955-970,2021, doi: 10.1080/00140139.2021.1891297
[2] Snook, S.H., “The design of manual handling tasks”, Ergonomics, 21, 12, pp.963-985, 1978, doi: 10.1080/00140137808931804.
[3] Snook, S.H. and V.M. Ciriello, “The design of manual handling tasks: revised tables of maximum acceptable weights and forces”, Ergonomics, 34, 9, pp.1197-1213, 1991, doi: 10.1080/00140139108964855.