AET_readme

AET: ACGIHの持ち上げと上肢反復作業のTLV計算

【1】概要

 本ソフトAETは、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists, 米国産業衛生専門家会議)の以下の3つのTLV (Threshold Limit Value, 許容閾値)を計算するためのものである。
1)持ち上げ (Lifting) のTLV [1][2]:荷物持ち上げ作業の評価
2)手の活動度 (Hand activity) のTLV [3][4]:上肢反復作業の評価
3)上肢局所疲労 (Upper limb localized fatigue) のTLV [5][6]:上肢反復作業の疲労評価
 本ソフトは、起動したメイン画面には持ち上げのタブが表示されている。手の活動度と上肢局所疲労は別なタブにそれぞれ入っている。

(注意!)
・ACGIHにおけるTLVとは、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる閾値である。他の人間工学評価ツールでも、同様な閾値を示すのに「限界値」や「許容値」など様々な用語が用いられているが、厳密には定義が同じではない点に注意すること。
・ACGIHのTLVは、それ相応のトレーニングを受けた人の利用を想定している。実際の利用に際しては、各自で原本のTLVである文献[1]~[4]を入手・理解のうえで利用いただきたい。
・3つのTLVの初版の公表時期は、Liftingが2005年、Hand activityが2001年(2018年改訂)、Upper limb localized fatigueが2016年となっている。適用できる作業時間や部位などが微妙に異なる点には特に注意すること。

【2】データファイルの扱い

・画面で入力した設定値は、画面右端中段の[レコード]の[保存]や[上書]で保存される。保存せずに別なレコードに移動すると、未保存の設定値は警告なく消えるので注意すること。保存したレコードデータは、[削除]で削除できる。保存できる最大レコード数は1,000件である。
・データの保存先のファイルは、画面右端上段の[ファイル]の[新規]・[保存]で指定できる。[開く]を使うと、既存ファイルの読み込みができる。
・起動直後にファイルを指定しないと、ドキュメントフォルダの\Ergo4MFG\AETフォルダ内のAETdata.hetというファイルにデータは仮保存される。のちに[ファイル]の「保存」から保存すべきファイル名を指定すると、そのファイルにデータは保存される。
・保存データは、CSV形式(シフトJIS)で保存されているテキストファイルなので、そのままエクセル等で利用することが可能である(ファイルをコピーして拡張子を.csvに変更するとエクセルですぐに読み込める)。本法は、1つのファイルに複数のツールのデータを保存できるようにしたので、1レコードが変数名リスト1行とデータリスト1行の2行の単位で保存されている。

【3】持ち上げ (Lifting) のTLV [1][2]

1)概要
 持ち上げのTLVは、反復する荷物持ち上げ作業により腰痛が発生しない荷物質量の許容閾値である。本法は、NIOSHのLifting equation(以下、NLE) [7]を簡単に利用できるように表の形にし、さらに値をACGIHで独自に調整したものである。作業時間と反復回数および持ち上げの始点と終点の位置等を指定するだけで、その作業条件に応じた荷物の質量閾値をTLVとして求めることができる。
 本法は1日8時間までの両手での荷物持ち上げ作業を対象とする。

2)使用方法
・作業時間:2時間以下か2~8時間のいずれかを選択する。8時間を超える作業には適用できない。
・反復回数:1時間当たりの反復回数を12~360回/時間の間を4区分されたもので選択する。360回/時間(1分あたり6回)を超える頻度の持ち上げには対応しない。
・始点と終点の位置の指定:図中の赤い四角が始点、青い四角が終点である。直接数値をアップダウンしてもよいし、図中の赤い四角あるいは青い四角をドラッグして動かしてもよい。マウスドラッグできる領域は横軸は0-100 cm、縦軸は0-190 cmの範囲に制限されている。

・終点での位置決め等:通常、TLVは基本的に始点でのTLVを採用する。ただし、終点付近での保持や位置決めなどが必要な場合(NLEでいうところのSignificant Controlがある場合)[7]は、始点と終点の両方のTLVのうち小さいほうを最終のTLVとして採用する。ただし、位置決め等がない場合でも、始点と終点のいずれかでTLVが計算できない場合には、最終のTLVは不可となるので注意すること。
・図中の薄い色がついた領域と数字は、それぞれの領域のTLVの値を示す。Xと表示された灰色の領域は、推奨されない領域である。また、色がついていないところも、推奨されない領域である。緑はTLVが高くて質量のある荷物が扱えるエリア、赤い領域はTLVが低くて重量物を扱うことが推奨されないエリアであることを示す。
・実作業の評価としては、実作業での取り扱い物質量がTLVより低くかつ他のリスク要因がないなら腰痛リスクは低いので改善は不要、高ければ腰痛リスクがあるので要改善となる。

3)補足説明
・本法の検討過程も含めた詳細が記載されている文献[2]には、以下のような解説がある。
(a) 同様な表の形のツールとしてワシントン州の持ち上げ計算シート(WISHA lifting calculator)[8]があるが、これは肩以上の高さと握り以下の高さの許容限界値が高く、腰痛予防に十分でないところがある。
(b) 本法はNLEをベースにしているが、NLEでLI≦1とすると過剰に安全サイドによりすぎており、本法ではLI=1.8あたりを目指している。2時間以下の場合の手元の値は32 kgとかなり高いが、これでも十分と判断している。
(c) NLEのような式による表記を使わずに3つの表で評価する方法を選んだのは、使用が簡便でかつこれで十分とみなしたためである。
(d) 本法は、30度以上の体のひねりがある姿勢、片手作業、荷物が持ちにくい作業などには適用できない。基本的にNLEの制限と似ているが、正確には文献[1]および[4]を参照のこと。これらの要因がある場合は、TLVを満たしても筋骨格系障害の発症リスクがある。
・本法での荷物の高さの区分は、作業者の体格をベースにしている。一番下の区分は[床面]から[足首と膝の中点]の間、2番目の区分は[足首と膝の中点]から[直立位での手の握りの高さ]、3番目の区分は[直立位での手の握りの高さ]から[肩から8 cm下の高さ]、4番目の区分は[肩から8 cm下の高さ]から[肩から+30 cmの高さあるいはリーチ高さあるいは床から180cmの高さ]となっている。本ソフトでは、身長を日本人の40歳の男女平均の166 cmとして人の形を描画して以上の高さの区分を決めている。
・本法での荷物との水平距離の区分は、体に近い1番目の区分は[左右の足の内果の中点]から前+30 cm、2番目の区分が+30~+60 cm、3番目の区分が+60~+80 cmとなっている。こちらは、作業者の体格には依存しない。

【4】手の活動度 (Hand activity) のTLV [3][4]

1)概要
 本法は、上肢反復作業による上肢障害予防のためのTLVを求める方法である。
 上肢反復作業の健康障害には、力の発揮と手の動きの程度が大きく関係する。また、手の動きが多いほど高い発揮力での作業はより負担になることが知られている。そこで本法では、手の活動度から求めた発揮力の許容閾値をTLVとして求め、実作業の発揮力が本法で求めたTLVを超えるかどうかでリスク判定を行う。
 本法では、手の活動度をHand activity level(以下, HAL)と呼ばれるスケールで記録する。HALは0~10の値をとり、手の活動がほぼない場合に0、手がほとんど動きっぱなしである場合に10の値とする。手の動きを実測できる場合は、作業のデューティ比DC(1周期の作業の所要時間であるサイクルタイムに対する労作発揮した時間の割合. Duty Cycle、以下、DC)と反復頻度F [Hz]から専用の式を用いてHALを推定する方法もある。
 HALから求めた発揮力の閾値であるTLVは、発揮力を最大発揮力で正規化した値であるNPF (Normalized peak force、正規化最大発揮力)として求められる。
 本法は、1日4~8時間行われる上肢の反復作業を評価するのに利用される。
 本法で対象とする部位は、手・手首・前腕のみである。手作業をする場合に筋骨格系障害が生じるのは必ずしも手や腕だけではないが、そこは考慮していない。また、手・手首・前腕などの保持が20分を越えない範囲の作業に適用すること。

2)使用法
(1) 手の活動レベルHAL
HALの値は、直接入力するほか、プルダウンメニューから選択して入力する方法と、デューティ比DC[%]と反復頻度F[Hz]から計算して求める方法が利用できる。
 プルダウンメニューで入力する方法では、メニューの用語を参考に選択する。本ソフトでは0~10の値が選択できる。各段階の正確な意味は元文献を参照のこと。HALは、力発揮の程度は考慮せずに手の動きの程度から判定する。手を休みなく動かしている場合はHALは6や7になり、さらに手の動きが速い場合は8や9になる。逆にそれなりの頻度の作業でも、手を動かさない時間が間に確実に入るとHALは2から4になる。手を動かさない間があまりない場合にはHALは5や6になるが、
 0: 手はほぼ遊んでいる.一定の動作はなし
 2: 一貫して目立つ長い停止.あるいは非常に遅い動き
 4: 遅い定常動作・労作.短い停止が頻回あり
 6: 定常動作・労作.停止は時々
 8: 速い定常動作・労作.定期的な停止なし
 10: 速い定常動作.追従困難な動作や連続労作
 HALは、2018年の改訂版よりデューティ比DC[%]と反復頻度F[Hz]から求めることもできるようになった。その式は文献[9]によると以下のとおりである:
  HAL={6.56×ln(DC)]×[F^1.31/(1+3.18×F^1.31)]
ここで、ln()は自然対数である。上記の式のDCとFのレンジは文献[3][4]には記載がないが、DCについては0.1-100%、Fは0.001-2[Hz]としている。Fの上限は文献[9]による。ただし、計算したHALの値は0-10のレンジになるようにしている。
 このDCとFからHALを指定する式の関係は、ソフトの画面右中央のグラフで示している。グラフの中の十字の中央の四角をマウスでドラッグすると、任意のDCとFの組み合わせに値が設定できる。グラフでは左下のDCもFも低い条件ほどHALは小さく、右上のDCもFも高い条件ほどHALも高くなることを示している。文献[3][4]には、上記と同じ式が記載されているほか、D=0-20%, 20-40%, 40-60%, 60-80%, 80-100%、F=0.125, 0.25, 0.5, 1.0, 2.0 Hzの区分の組み合わせでのHALの値が表で示されている。なお、その表には適応外の組み合わせがあることが示されているが、本ソフトはそれには対応していない。
(2) 正規化最大発揮力NPF
 筋力の発揮がない状態が0、最大発揮の状態を10とする値である。Borg CR10と同じスケーリングで使用できる。また、最大筋力比%MVCを10で割った値でもある。NPFは、発揮力のピーク値をそのまま採用するのではなく、発揮力の分布の90パーセンタイル値を採用する。また、作業中の力データが実測できる場合では、力発揮時データのうちで最大発揮力の10%未満のノイズ成分を除いたデータのうちの90パーセンタイルの値をNPFとする。
(3) ALとTLVの計算
 HALから、NPFのAL(アクションリミット)とTLVであるNPF_ALおよびNPF_TLVを求める。これを求める式は、文献[3][4][10]によると以下のとおりである:
  NPF_AL=3.6-0.56×HAL
  NPF_TLV=5.6-0.56×HAL
 ただし、TLV等が利用できるHALは1~9に限定されている。本ソフトでは、NPFが負になる場合はNPF=0としている。
(4) 上肢障害のリスク判定
 本法では、NPFと(3)で求めたALおよびTLVより、以下のように上肢障害のリスク判定を行う。
   NPF≦NPF_AL:低リスク・改善不要
   NPF_AL<NPF≦NPF_TLV:中リスク・要調査・改善
   NPF>NPF_TLV:高リスク・要改善
 ソフト画面右下にHALとNPFとの関係を示すグラフがある。グラフの緑のエリアが低リスク、黄色が中リスク、赤が高リスクの領域を示している。グラフ中の十字の中央の四角をマウスでドラッグすると、任意のHALとNPFが指定できる。
 ソフト画面中央右のNPFの帯グラフでは、緑の領域はAL以下、黄色がAL~TLV、赤がTLV以上のエリアを示している。作業のNPFの帯は、どの領域に含まれるかで色付けしている。
(5) 最大力インデックスPFI (Peak force index)
 本ソフトでは文献[3][4][10]に従い、次式によるPIFも求めている。PFIは、ALあるいはTLVに対する作業のNPFの比で、1以下であることが求められる。
  PFI_AL=NPF/NPF_AL (≦1ならOK)
  PFI_TLV=NPF/NPF_TLV (≦1ならOK)

3)補足説明
・アクションリミットAL (Action Limit)とは、文献[4]によると早めに改善活動を起こすべき閾値と定義されている。これは、TLVでは完全にすべての障害を防ぐことができず、少しでも障害が発生しうるレベルから教育や調査といった改善のための介入活動を起こす必要があるためである。そのレベルがALである。
・上記で示したHALからNPF_ALおよびNPF_TLVを求める式は、2018年の改訂版による式である。それ以前の版では、以下の式が用いられていた[10]:
  NPF_AL=5.6-0.56×HAL
  NPF_TLV=7.8-0.78×HAL
 古いHALの資料を参照する場合は式の違いに注意すること。

【5】上肢局所疲労 (Upper limb localized fatigue) のTLV [5][6]

1)概要
 本法は、上肢反復作業における上肢局所の蓄積疲労を防ぐためのTLVを決める方法である。反復作業の場合、繰り返し頻度が同じであっても反復動作中に筋が活動が持続的している時間の割合(つまり、Duty Cycle, 以下、DC)が高いと、発揮筋力を下げないと疲労が蓄積して動作が継続できなくなる。逆に筋の活動の時間的な割合が短ければ、高い発揮筋力を一時的に出すだけなら反復することは可能になる。つまり反復動作は、作業サイクル中のDCに応じて許容できる筋活動レベルである最大筋力比%MVCが決まる。その限界の%MVCをTLVとして求めるのが本法である。
 本法が対象とする作業は、2時間以上の作業である。
 本法が対象とする「上肢」は、手・手首・前腕・肘・肩である。一般には上肢作業に伴って体幹や下肢も使用されるが、本法ではこれらの部位の影響は考慮されていない。

2)使用方法
(1) DCと%MVCの入力
 作業のデューティ比DCを入力すると、それに応じた最大筋力比%MVCのTLV(%MVC_TLV)が計算される。逆に%MVCを入力すると、それに応じたデューティ比DCのTLV(DC_TLV)が計算される。
 DC[%]から%MVC_TLV[%]を求める式は文献[11]によると以下のとおりである:
%MVC_TLV=(100%)×{-0.143×ln(DC/100)+0.066]
ここで、ln()は自然対数である。
 %MVCからDC_TLVを求める式は、上式の逆関数であり、以下のとおりである:
  DC_TLV=(100%)×exp{(0.066-%MVC/100)/0.143}
 本法が適用できるDCのレンジは0.5-90%とされているので[5][6]、これに対応する%MVCのレンジは8.1-82.4%になる。ソフトとしてはこのレンジを超える指定はできないようにしている。
 ソフト画面左下に、DCと%MVCの関係がグラフで示されている。グラフの左下の緑の領域はリスクのない領域、右上の赤の領域はリスクのある領域である。グラフ中の十字の中央の四角をマウスでドラッグすると、任意のDCと%MVCが指定できる。

(2)TLVによるリスク判定
 リスクの判定は以下とおりである。
  DCを指定した場合の%MVCの判定
   実作業の%MVC≦%MVC_TLV:低リスク・改善不要
   実作業の%MVC>%MVC_TLV:高リスク・要改善
  %MVCを指定した場合のDCの判定
   実作業のDC≦DC_TLV:低リスク・改善不要
   実作業のDC>DC_TLV:高リスク・要改善

(3) ETとFの入力
 作業の労作時間ET{秒]を指定すると、上記で入力した作業のDCから以下の式で作業の頻度Fが求められる。
  F=DC/(100×ET)
 あるいは作業の労作時間ET{秒]と作業の頻度F[Hz]を両方とも直接入力すると、上式から逆にDCを決めることができる。
  DC=100×F×ET
 ソフト画面右下に、Fと%MVCの関係がグラフで示されている。横軸のFは対数軸になっている。グラフの左下の緑の領域はリスクのない領域、右上の赤の領域はリスクのある領域である。グラフ中の十字の中央の四角をマウスでドラッグすると、任意のFと%MVCが指定できる。

(4) 回復時間RTあるいは頻度Fによるリスク判定
 別途入力した実作業の%MVCより求めたDC_TLVから、最小回復時間RT[秒]、最小サイクル時間(=ET+RT, 秒)および頻度Fの上限(=1/サイクル時間, Hzおよび回/分)が計算される。それより以下の判定ができる。
(a) 回復時間RTに基づく判定
  実作業の回復時間≧DC_TLVから求めた最小回復時間RT:回復時間は十分。改善不要
  実作業の回復時間<DC_TLVから求めた最小回復時間RT:回復時間が不足して疲労が蓄積するリスクあり。要改善
 サイクル時間も同様に、DC_TLVからもとめた最小サイクル時間ET+RTのほうが実作業より長い場合は要改善となる。
(b) 頻度Fによる判定
  実作業の頻度F≦DC_TLVから求めた頻度F上限:頻度は低くて疲労が蓄積するリスクは低い。改善不要。
  実作業の頻度F>DC_TLVから求めた頻度F上限:頻度が高すぎて疲労が蓄積するリスクあり。要改善。

 ちなみにACGIHの原法では、作業のDCと%MVCの2つのみから判定する(2)の方法だけが記載されている。ただし実作業にあてはめて改善する場合には、労作時間ETと頻度Fを調整して改善できると便利である。それが(3)および(4)の方法である。ただしいずれを使用しても判定の結果は同じである。

3)その他
・手の動作と上肢局所疲労におけるDCは同じものである。1サイクル時間中の労作時間をET、疲労回復時間をRTとすると、サイクルタイム(1サイクルに要する時間)はET+RTなので、デューティ比DC[%]は以下の式で求められる:
  DC[%]=ET/(ET+RT)×100
・手の動作HALのNPFは、労作時の発揮力の最大値を0~10のスケールで表記した値である。これに対して上肢局所疲労の%MVCは、労作時の平均の発揮力を0~100%のスケールで表した値である。NPFを10倍すると%MVCとなって同じスケールの値になるが、前者は最大値(正確には90パーセンタイル値)、後者は平均値なので、通常は前者のほうが高い値になる。両者が一致するのは、労作中の筋発揮が一定の場合のみである。
(注)HALが最大値を使うのは、リスク推定には平均値よりも最大値あるいはピーク値が適するからであろう。上肢局所疲労が平均値を使うのは、疲労は負荷の蓄積で生じるものなので、最大値やピーク値よりも累積負荷に適する平均値が採用されたためであろう。妥当な使い分けと思われる。

【6】注意

1.本TLVの使用上の制限については原書を参照にすること。
2.TLVは毎年改定されており、ACGIHは常に最新版を参照するようにとアナウンスしている。たとえば「Hand activity」は、旧版では「Hand activity level」となっていた。改定の予定等の情報はACGIHのホームページで公開されている。また、改訂前にはNIC(Notice of Intended Changes, 意図した変更の告知)版が公表されて意見聴取をし、再度審議して最終版になるとされている。たとえば最近制定された上肢局所疲労のTLVは、2022年度版の「2022 TLVs and BEIs」ではNIC、「2023 TLVs and BEs」ではNIE (Notice of Intent to Establish) となり、「2024 TLVs and BEIs」で確定版となっている。
3.本ソフトはフリーソフトとして公開しているが、無断での複製や転載は不可である。
4.本ソフトは、使用者自身の責任において使用すること。作者は、本プログラムを使用したことによって生じたいかなる損害に対しても、それを補償する義務を負わない。
5.本ソフトは、現在も改良を進めている。予告なく仕様が変わる場合があることをご了承ください。

【7】作者および問い合わせ先

 ものづくりのための人間工学, 人間工学評価ツール開発メンバー
  URL https://ergo4mfg.com
  上記URLの問い合わせページよりお願いします。

【8】文献

[1] ACGIH. “Lifting”. 2023 TLVs and BEIs. ACGIH, 2023, p.193-196.
[2] ACGIH. Lifting: TLV(R) Physical Agents 8th Edition Documentation. 8DOC-734-PA, 2005.
[3] ACGIH. “Hand activity”. 2023 TLVs and BEIs. ACGIH, 2023, p.187-191.
[4] ACGIH. Hand Activity: TLV(R) Physical Agents 8th Edition Documentation. 8DOC-646-PA, 2018.
[5] ACGIH. “Upper limb localized fatigue”. 2023 TLVs and BEIs. ACGIH, 2023, p.208-210.
[6] ACGIH. Upper Limb Localized Fatigue: TLV(R) Physical Agents 8th Edition Documentation. 8DOC-782-PA, 2016.
[7] Waters, T. R.; Putz-Anderson, V.; et al. Revised NIOSH lifting equation for design and evaluation of manual lifting tasks. Ergonomics. 1993, 36(7), p. 749-776, doi: 10.1080/00140139308967940.
[8] State of Washington Department of Labor and Industries, WISHA lifting calculator, 2000-2002.
[9] Robert G. Radwin, David P. Azari, Mary J. Lindstrom, Sheryl S. Ulin, Thomas J. Armstrong, David Rempel. A frequency-duty cycle equation for the ACGIH hand activity level. Ergonomics, 2015, 58(2), p.173-183, doi: 10.1080/00140139.2014.966154
[10] Marcus Yung, Ann Marie Dale, Jay Kapellusch, Stephen Bao, Carisa Harris-Adamsond, Alysha R. Meyersf, Kurt T. Hegmann, David Rempele, Bradley A. Evanoff. Modeling the effect of the 2018 revised ACGIH(R) Hand Activity Threshold Limit Value (R) (TLV) at reducing risk for carpal tunnel syndrome. Journal of Occupational and Environmental Hygiene, 2019, 16(9), p. 628-633, doi: 10.1080/15459624.2019.1640366
[11] Daniel M. Abdel-Malek, Ryan C. A. Foley, Fahima Wakeely, Jeffrey D. Graham, Nicholas J. La Delfa. Exploring localized muscle fatigue responses at current upper-extremity ergonomics threshold limit values. Human Factors. 2022 64(2), p. 385-400, doi: 10.1177/0018720820940536.