REBAcalc2: 迅速全身評価計算 【1】概要  本アプリREBAcalc2は、Hignettらが開発したREBA (Rapid Entire Body Assessment)[1]による評価を支援するためのものである。REBAは、全身を使う各種作業での身体負担軽減や筋骨格系障害予防のためのアセスメントを迅速に行うことを目指した手法である。RULAが主に上肢を使用する作業を対象としているのに対し、本法は全身を使用する作業が主な対象作業である。OWASのような繰り返し記録を必要とせず、反復記録が前提のOWASのような手間をかけずに注目した場面のみを評価する方法である。姿勢のスコア分類もOWASより細かいので、より詳細な評価ができる。  本アプリには以下の機能が含まれる。 1)REBAの各身体部位のスコアを入力すると、REBAスコアやアクションレベルまでの計算を自動で行って結果を表示することができる。これより、全身に負担のかかる作業の評価と改善に利用することができる。 2)スコア表から身体部位のスコアを簡易的に逆表示する機能により、改善策の探索を支援する機能を持つ。  本アプリREBAcalc2 for Web2は、従来のPC版(Windows版)のアプリREBAcalc2をWeb上で作動するように移植したものである。両者は以下のような相違点がある。 1)PC版はWindowsでのみ作動していたが、Web版はブラウザを使えばWindows/Mac/Androidのいずれでも利用できる。対応しているブラウザはCrome/Microsoft Edgeで、FireFoxとSafariではレイアウトが多少崩れたりファイル操作で一部制限される部分はあるが、おおむね同じように動く。 2)PC版とのファイル互換性はない。Web版からPC版のデータファイルは読めない。ファイルの文字コードもPC版はShift-JIS、Web版はUTF-8で異なっている。 3)本アプリにはデータを自動保存する機能はない。そのため、データを「記録」しただけで「保存」せずに放置していると、Webの表示が自動更新されてデータが消える場合がある。注意すること。 4)PC版では、デフォルトでドキュメントフォルダに仮の保存ファイルが作られ、レコードを「保存」するたびに逐次仮ファイルに上書き保存されていた。しかしWeb版では上書き保存が制限されているため、仮保存ファイルは作られない。レコードを「記録」(従来のレコードの「保存」に該当)しただけでは、データはメモリ内にあるだけでファイル保存はされない。ファイル保存をするには、メインメニューの「保存」を必ず行う必要がある。「保存」せずに終了すると、データは消える。詳しくは「【4】レコードの記録とファイル保存」を参照のこと。 (注2)  「キャプチャ」の使用法については、他のアプリと共通の説明資料を参考のこと。 【2】入力項目  REBAは、OWASのように各時点の姿勢を繰り返し記録し集計して評価する方法ではなく、調査者が作業を観察し、頻度が高い作業場面あるいは負荷が高いと思われる作業場面のみを抽出して素早く評価する手法である。  上肢に関しては、左右いずれか一方のみを記録・評価する。基本的には評価の優先度が高い側のみを対象とする。  入力1画面の「図の表示」にチェックを入れると、身体部位の評価項目の表に図が追記される。入力2画面の上の「スコア表の表示」にチェックを入れると、表A、表B、表Cも表示される。それぞれ、姿勢スコアやスコア判定の参考にすること。  身体各部位のスコアは、ラジオボタンやチェックボックスをクリックすることで入力できる。  解析画面には人型の図が表示されている。各身体部位の項目を選ぶと、それに応じた姿勢が表示される。この姿勢はあくまで例であって、体幹のひねりや側屈あるいは上腕の外転などは正確には反映されていない。  人型の図の上にある「姿勢デジタイズ」にチェックを入れると、手・肩・腰の位置に赤いマークがつき、そこをマウスでドラッグすることにより角度を指定できる(マウスドラッグはマウスが使えるPCやタブレットでのみ利用可)。手位置は上腕と前腕の角度、肩は体幹の前傾、腰は膝の屈曲角を変えることができる。ただしデジタイズした各部位の角度を保存する際には、それぞれの部位の角度区分でしか記録されないので、再表示したときには必ずしも同じ姿勢にならない。  入力した値は、画面上段のメインメニューのレコードの[記録]でメモリに追加保存される。[上書]はメモリ内にある既存レコードの修正上書きである。記録したデータをファイルにダウンロード保存するには、メインメニューのレコードの「保存」をする。  1つのファイルに保存できるレコード数の制限はない。 1.体幹・頸・下肢 1)体幹:前傾角に応じてスコアをつける。ひねり(回旋)や側屈があれば+1とする。おおむね20度を超えるとひねりや側屈があるとみなすのが良さそう。 2)頸:前屈あるいは後屈に応じてスコアをつける。頸のひねりや側屈があれば+1とする。これも20度を超えるとひねりや側屈があるとみなすのがよさそう。 3)下肢:両足立ちの時や座位では1、そうでないときは2にする。膝の曲がりで+1または+2する。 4)荷重・力スコア:5kg未満の物の取り扱いまでなら0、5~10kgなら1、10kg以上なら2とする。手で叩くような動作や急激な力の発揮がいる作業なら+1する。 5)上記の1~3より表Aのスコアが求められ、表Aのスコアと荷重・力スコアの合計がスコアAである。  表Aが表示されていて「表デジタイズ」にチェックが入っている場合、表中をマウスでクリックすると、そのスコアに応じた身体部位のスコアが仮に提案される。表の中の黄色いセルはそれ単独で最後のALが黄色判定になるところ、赤いセルはそれ単独で最後のALが赤か紫になるところを示す。 2.上腕・前腕・手首 1)上腕:上肢の屈曲・伸展角に応じた肢位を選ぶ。また、肩の挙上、回旋や外転、支えがあれば追加スコアとしてチェックを入れる。肩の挙上は、腕を高くあげてする作業、肘を上にあげてする作業、作業面の高さが肘の高さより微妙に高い作業場面などでよくみられる。回旋や外転は20度以上あればチェックを入れるのがよさそう。 2)前腕:前腕が水平な状態を基準の1とし、それより曲げるか伸ばすとスコアが2になる。 3)手首:おおむね掌屈も背屈もなければ1、そうでなければ2にする。手首の橈屈・尺屈あるいは前腕の回内・回外が強い場合は+1する。 5)上記の1~3より表Bのスコアが決まる。それに取り扱い物の握りなどの持ちやすさ(Coupling)に応じて0~3のスコアをつける。表Bのスコアと持ちやすさのスコアの合計がスコアBである。 6)表Bが表示されていて「表デジタイズ」にチェックが入っている場合、表中をマウスでクリックすると、そのスコアに応じた身体部位のスコアが仮に提案される。表の中の黄色いセルはそれ単独で最後のALが黄色判定になるところを示す。 3.REBAスコア  スコアAとスコアBから表Cのスコアが求められる。それに活動度スコアを加えるとREBAスコアが求められる。  活動度スコアは、動きがない保持姿勢の場合、頻度が1分間に4回以上の作業、全身の急激で大きな動作や姿勢が不安定になるような動作がある場合などで、それぞれチェックを入れると+1ずつスコアが加算される。  表の中の黄色いセルはそれ単独で最後のALが黄色判定になるところ、赤いセルはそれ単独で最後のALが赤か紫になるところを示す。 【3】評価と判定  以上の項目の入力がすべて終わると、REBAスコアからアクションレベルALの判定が行われる。アクションレベルに応じた対応は、表示の表の通りである。ALが3や4の場合は改善を進める必要がある。ALが1ならリスクは低で緑、ALが2ならリスクは中で黄色、ALが3ならリスクが高で赤色、ALが4ならリスクは高で紫色に表示される。  解析画面下の詳細結果の欄には、結果の解釈が表示される。簡単な対策例も併記されるので参考にすること。各関節では、おおむねスコアが3以上の場合に個別のコメントを表示するようにしている。 【4】レコードの記録とファイル保存  繰り返しになるが、以下にレコードの記録とファイル保存について改めて説明する。  各レコードのデータの記録やファイルへの保存等は、画面上のメインメニューにあるボタンで行う。基本的な操作は、各レコードのデータを入力して「記録」し、あとでまとめてファイルに「保存」(ダウンロード保存)するという手順になる。 ・レコードのデータを入力したら、メインメニューの「レコード」の[記録]でメモリ内に保存する。「記録」せずに別レコードに移動すると、表示していたデータは警告もなく消えるので注意すること。「記録」したレコードのデータは、[削除]で削除できる。記録できるレコード数に制限はない。 ・「記録」されたレコードデータの一覧は、結果画面の下に「レコード一覧」として表示される。 ・「記録」したレコードデータは、メインメニューの「ファイル」の「保存」で1つのファイルにまとめてダウンロード保存される。「保存」を忘れてアプリを終了させたりリロードを行うと、記録したレコードデータは消えてしまうので注意すること。 ・保存されるファイルの名前は、先頭3文字が「RBA」、そのあとに年月日時分秒の文字列が続き、拡張子がtxtのファイルに固定されている。保存先は、使用しているブラウザで指定されたダウンロードフォルダに固定されている。  (注1)本アプリで保存したデータを扱う場合、ファイル名の先頭3文字は半角大文字のRBAから変更しないこと。拡張子もtxtから変更しないこと。レコードデータのファイルの年月日時分秒の部分は変更してもよい(同時にキャプチャした画像がある場合、画像fileのファイル名は年月日時分秒の部分も含め変更してはならない)。  (注2)ブラウザは上書き保存ができない。そのため、同じデータで「保存」を繰り返すと、そのたびに年月日時分秒の部分が更新された別名のファイルがダウンロードされる。 ・ダウンロードフォルダに入ったファイルは、適宜、別フォルダに移動させて使用すること。 ・保存したファイルは、「開く」で呼び出せる。ここで複数のデータファイルを指定すると、、それぞれのファイルのレコードデータが結合されて読み込まれる。 ・キャプチャで記録した画像ファイル(拡張子はpng)がある場合、それを同時に指定するとキャプチャ画面やレコード一覧で画像ファイルが参照される。 ・「新規」にすると、メモリ内に保持されているデータを消して、新たなデータを入力できるようになる。  (注)表示等も含めて完全にクリアしたい場合は、ブラウザでリロードする。 ・保存データは、CSV形式(UTF-8)で保存されているテキストファイルなので、そのままエクセル等で利用することが可能である。ただしコードがUTF-8なので、漢字のあるファイルだと、直接csvファイルとして読むと文字化けするので注意すること(エディタ等を介してコード変換するか、読み込み時にUTF-8を指定すること)。 【5】注意 1.本アプリは、以下の論文を基に作成した。図表は作者が本アプリ用に作成したものである。厳密には原文やその図を参照すること。  Sue Hignett, Lynn McAtamney, "Rapid Entire Body Assessment (REBA)", Applied Ergonomics, Vol.31, No.2, pp.201-205, 2000. 2.本アプリの利用は自由であるが、無断での複製・改変・転載は不可である。 3.本アプリは、使用者自身の責任において使用すること。作者は、本アプリを使用したことによって生じたいかなる損害に対しても、それを補償する義務を負わない。 4.本アプリは、現在も改良を進めている。予告なく仕様が変わる場合があることをご了承ください。 【6】作者  ものづくりのための人間工学, 人間工学評価ツール開発メンバー   URL https://ergo4mfg.com   上記URLの問い合わせページよりお願いします。 【7】文献 [1] Sue Hignett, Lynn McAtamney, "Rapid Entire Body Assessment (REBA)", Applied Ergonomics, Vol.31, No.2, pp.201-205, 2000